研究テーマ:文脈改変を用いた痛みのマスキング

痛みは日常生活において避けては通れない事象の一つであり、これは普段の行動での過失や医療現場で頻発します。これに対して薬剤投与で対処することが一般的ですが、投与する薬剤の効き目は人によって個人差が大きく、場合によっては副作用の可能性も危惧されます。そこで刺激部から注意をそらす手法や刺激を受けている人の様子を変更するといった薬剤投与を行わない痛みの軽減手法が注目されています。しかしこれらの手法は個人の認知によるものであるため、個人差が大きいという特徴があります。また注意をそらす手法に関して痛みを過度に恐れる人や、痛みを深刻な脅威と考える人には効果が得にくいとされています。したがって、薬剤投与を行わないほかの種類の痛み軽減の手法を開発することはより多くの人が薬剤投与を行わずに痛み軽減ができる可能性が上がるため重要です。そこで私は刺激原因から注意をそらさなくてもよい新たな手法である「文脈改変を用いた痛みのマスキング」という新たな手法を提案しました。本手法は痛み刺激原因の見た目をHMDなどを介して人にとって不快ではないものに変更することで感じる痛みを軽減するものです。本研究の貢献先は医療分野だけではなく、刺激原因から注意をそらす必要がないという利点を生かし脱毛や髭剃りといった日常的に自身で処置を行うような場面も考えられます。
研究発表実績
・小野田響,今笙羽,高見太基,牛山奎悟,溝口泉,梶本裕之“文脈改変を用いた痛みのマスキング.” , 第29回バーチャルリアリティ学会大会,2024.
・Hibiki Onoda, Shoha Kon, Taiki Takami, Keigo Ushiyama, Izumi Mizoguchi, Hiroyuki Kajimoto, “Investigating the Effectiveness of Pain Masking Through Contextual Modification”, CHI EA ’25
